
オンデマンド研修とは?メリットや成功させるやり方・コツを徹底解説
働き方の多様化やIT技術の進化により、従来の集合研修に代わる新しい学習形態として「オンデマンド研修」が注目を集めています。時間や場所の制約を受けずに学習できる特性から、多くの企業が導入を進めており、人材育成の新たなスタンダードとなりつつあります。
本記事では、オンデマンド研修の基本的な仕組みから、具体的なメリット・デメリット、成功させるための導入ステップまで、人材育成の専門家の視点から詳しく解説します。
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オンデマンド研修とは?
オンデマンド研修とは、受講者の都合に合わせて学習できるオンライン研修です。この形式について、掘り下げて見ていきましょう。
オンデマンド研修の定義
オンデマンド研修とは、事前に作成された動画コンテンツやスライド資料といった学習コンテンツを、オンラインで配信する研修形式のことです。リアルタイムで研修や講義を行うわけではないため、受講者は好きな時間、場所から自分のペースで学習を進められます。
一方向型のオンデマンド配信となるため、リアルタイムで行われる研修とは異なり、講師に直接質問することはできません。しかし、学習コンテンツの視聴期限までは何度も視聴できるので、分からない部分を繰り返し見るなど、自分の理解度に合わせて学習できます。
オンデマンド研修が注目される背景
オンデマンド研修が普及している背景には、働き方の変化やIT技術の進化が深く関わっています。
働き方の多様化に伴い、リモートワークやフレックス制などの働き方が一般的になりました。その結果、従来のような現地での集合研修や一斉研修では、社員のライフスタイルなどに合わなくなってきました。そこで、時間や場所を問わずに学習できるオンデマンド研修が注目を浴び、社員一人ひとりが無理なく取り組める学習スタイルとして定着しつつあります。
また、IT技術の進化も、オンデマンド研修の普及を後押ししています。5G通信など高速インターネットの普及により、高画質な動画配信がスムーズに行えるようになりました。さらに、クラウド技術の発達により大容量の動画教材やスライドなどをオンライン上で簡単に管理・閲覧できます。その結果、どこからでも研修を受けられる環境を作ることが、技術的に可能になりました。
さらに、近年ではAIを活用した自動字幕生成・翻訳、学習データの解析などの機能が向上。より効果的な学習コンテンツの作成が可能になり、オンデマンド研修の質も向上しています。このような背景から、海外ではオンデマンド研修は企業の人材育成の標準になりつつあり、日本でもオンデマンド研修を取り入れる企業が増えています。
従来の集合研修とオンデマンド研修との違い
従来型の集合研修とオンデマンド研修の違いをまとめると、次のようになります。
集合研修 |
オンデマンド研修 |
|
学習
方法
|
決められた時間・場所に受講者が集まり、講師がリアルタイムで指導 |
事前に用意された教材を受講者が個別に視聴して学習 |
他者との交流 |
その場で講師への質問や受講者同士でのディスカッションが可能 |
リアルタイムで講師への質問などは行えないことが多い |
研修
内容
|
講師によって研修内容やクオリティに差がある |
全員が同じ学習コンテンツを使用するため、研修内容は均一化されている |
手間・
コスト
|
スケジュール調整、会場費や交通費などのコストが必要 |
所有しているパソコンやスマートフォンから参加可能で、通信費などのコストが必要 |
どちらにも優れている点や苦手な点があるため、一概にどちらが良いとは断定できません。ただし、研修のクオリティや手間・コストの面では、圧倒的にオンデマンド研修が優れています。
オンデマンド研修とeラーニングの違い
オンデマンド研修とeラーニングは、どちらもオンライン上で研修を行うため、同じ意味の研修として使われることがあります。しかし、オンデマンド研修とeラーニングには異なる特徴があるため、それぞれが指している研修の内容や違いを理解しておくことが大切です。
一般的に、オンライン研修には「一方通行型(オンデマンド型)」と「双方向型(ライブ配信型)」の2つに分けられます。オンデマンド研修は、企業などが用意した学習コンテンツを自身で学ぶため、一方通行型の研修となります。
eラーニングは、電子技術やオンライン技術を使った研修全般を指す言葉です。つまり、eラーニングの中には、一方通行型と双方向型の2つの研修が含まれています。オンデマンド研修はeラーニングの1つの形態です。
そのため、「オンデマンド研修」と受講者へ案内する場合は、ライブ配信などをしない形態を指します。一方で、「eラーニング」と案内する場合は、どのような研修内容なのかを事前に告知しないと、受講者を混乱させてしまいます。告知時には、どのような形式で研修を行うのか詳細な告知が必要です。
下記の記事では、eラーニングについてより詳しく解説しています。オンデマンド研修を含めたオンライン研修を始めるときの参考になるので、ぜひ合わせてチェックしてください。
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オンデマンド研修の主なメリット
オンデマンド研修は、受講者と会社側のどちらにも便利な研修方法の1つです。ここでは、改めてオンデマンド研修の主なメリットについて詳しく解説します。
いつでも学習できる
オンデマンド研修の最大のメリットは、時間と場所の制約なく研修に参加できることです。従来の集合研修とは違って、スケジュール調整をする必要がなく、仕事や育児など、受講者のスケジュールに合わせて都合の良い時間に学習を進められます。そのため、早朝や夜間など、集合研修が開催できない時間帯でも研修を受けられます。
また、さまざまな場所からアクセスできるため、自宅だけでなく通勤中や出張先のホテルなどからも研修に参加できます。例えば、出張や休日などで受講者が揃わなくて研修日が遅れる・決まらないといったことがありません。迅速に必要な知識やスキルのアップデートを促すことが可能です。
自分の理解度に合わせて学べる
オンデマンド研修では、事前に作成された学習コンテンツを活用して1人で学ぶため、誰かに迷惑をかけることがありません。例えば、ペースが早くて理解が進まないときでも、一時停止してメモしたり、繰り返し見直したりして、内容をきちんと把握してから次の学習に移れます。
このように、受講者は自分の理解度やペースに合わせて学習を進められるので、知識やスキルの定着につながります。また、すでに理解している内容は飛ばすこともできるので、人によっては集合研修よりも効率良く学習できます。
研修担当者の負担を軽減できる
オンデマンド研修を導入する会社側のメリットには、研修担当者の業務負担を大幅に軽減できることが挙げられます。従来の集合研修では、会場の手配から参加者のスケジュール調整、当日の出欠管理、資料の準備・配布などまで、多くの事務作業が必要でした。
しかし、オンデマンド研修であれば、一度教材を作成してシステムに登録すれば、その後の作業の大部分が自動化されます。受講状況の記録、進捗管理、テスト結果の集計なども自動で行われます。担当者は学習コンテンツの作成に集中したり、個別のフォローアップなどの時間を確保したりでき、より質の高い人材育成業務が可能です。
研修品質を均一化できる
集合研修のメリットでもありデメリットでもあるのが、研修内容の品質です。集合研修では講師の知識やスキル、経験によって研修内容が決まるため、講師によって研修内容にばらつきが生じる場合があります。例えば、同じ研修内容でも進め方や話すスピードによって、受講者の理解度が変わってしまいます。
一方、オンデマンド研修の場合は、全ての受講者が同じ学習コンテンツを使用するため、研修の品質を均一化できます。優秀な講師や企業に依頼し、高品質な教材を一度作成すれば、すべての受講者が同じレベルの研修を受けられます。そのため、拠点ごとに研修を開催する場合など、複数回研修を行うときや受講者が大人数になるほど、品質の均一化は大きなメリットとなります。
コスト削減につながる
オンデマンド研修は、従来の集合研修と比べてコストがかかりません。例えば、研修会場を用意する必要がないため、会場費や交通費、宿泊費といった経費が不要になります。さらに、一度作成した研修動画やスライドは何度でも活用できるため、維持コストも低く抑えられます。
オンデマンド研修で必要な費用には、デジタルツールの導入費用やランニングコスト、学習コンテンツの作成費用などが挙げられます。LMSを活用した研修であれば、受講者それぞれのデバイスで学習を進めてもらえるため、機材費などは必要ありません。オンデマンド研修にも費用はかかりますが、長期的に見ると集合研修よりも大幅な費用削減効果が期待できます。
教材のアップデートが簡単
オンデマンド研修で使用するデジタル学習コンテンツは、すぐに修正やアップデートが行えます。業界の最新動向や法改正、社内制度の変更などがあっても、必要な部分だけを修正・更新するだけで、最新の学習コンテンツで研修を始められます。
教本など従来の印刷教材は、一度作成すると修正までに時間がかかるため、その都度講師による修正を伝える必要があり、複数の情報が混在する可能性がありました。デジタル学習コンテンツは、常に最新の状態を保てるので、より現状に即した実用性の高い研修を実施できます。
下記の記事では、看護現場で実際に行われているオンライン研修について解説しています。具体例を知ることで、よりオンライン研修の理解が深まるので、他業種の方もぜひ参考にしてください。
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オンデマンド研修のデメリットと対策
オンデマンド研修には多くのメリットがありますが、デメリットもいくつか存在します。オンデマンド研修を効果的に行うためにも、ここでは主なデメリットとその対策について解説します。
リアルタイムでのコミュニケーションがとれない
オンデマンド研修の最大のデメリットは、事前に収録された学習コンテンツを一方的に視聴することです。学習コンテンツの中に分からない部分があっても、集合研修のように講師やほかの受講者に質問できないため、自分の力だけで理解する必要があります。そのため、研修の中で生じた疑問をその場で解決できず、理解が追いつかなくなることも多いです。
この課題に対する対策として、次のような環境を整えることが有効です。
- 質問受付システムの導入
- 定期的な対面でのフォローアップの開催
また、重要なポイントや質問が多い事柄については、あらかじめ「よくある質問」として、学習コンテンツ内に用意しておくことも効果的です。
研修への意欲が客観的に分からない
オンデマンド研修は、いつでも学習できる一方で、「余裕のあるときに研修を受ければ良いや。」と研修を受けるのを後回しにされることがあります。研修内容の理解や取り組み方は受講者のモチベーションに大きく左右されることがデメリットといえるでしょう。
受講者のモチベーションを維持・向上させるためには、次のような対策が効果的です。
- 学習目標の明確化
- 進捗の可視化
- 適切な頻度でのフィードバック
- 修了証などのインセンティブ制度
オンデマンド研修が自己成長につながることをきちんと伝えることは、研修へのモチベーションにもなります。成長していることを可視化できる仕組みを設け、受講者のやる気を引き出しましょう。
効果的な対策は「研修効果測定」
主なデメリットとその対策について解説してきましたが、どのようなデメリットに対しても効果的な対策となるのが「研修効果測定」の実施です。研修効果測定とは、受講者一人ひとりの学習状況や理解度などから、研修の効果を測定することです。
例えば、研修内容に関するテストを実施し、正答率だけでなく回答の内容や学習時間などを合わせて分析することで、受講者の学習結果・状況を客観的に判断できるようになります。さらに、個人の学習状況や結果に合わせて個別のフォローアップなどを行うことで、受講者全体の理解度を向上させられます。
また、定期的なアンケートや面談を通じて、受講者の満足度や理解度を確認し、学習コンテンツの内容や継続的な改善を行うことも大切です。受講者の感想や意見をもとに学習コンテンツをアップデートしていくことで、より質の高いオンデマンド研修が可能になります。
オンデマンド研修の主な活用シーン
オンデマンド研修はその柔軟性と効率性から、様々な場面で活用されています。ここでは、オンデマンド研修の主な活用シーンをご紹介します。
企業研修
企業が行う研修は、必ずしもスキルアップに関わるものだけではありません。ハラスメント防止研修やコンプライアンス研修など、一般業務の中で守るべきことを教える研修も多く開催されています。オンデマンド研修は、全社員が受講するような必須研修や、定期開催が求められる研修では特に効果を発揮します。
また、リーダーシップ研修、マネジメント研修など、対象者が限定される研修においても、オンデマンド研修が効果的に働きます。こうした研修は、対象者が少ないわりに研修準備にかかるコストや手間が大きいため、オンデマンド研修で効率化するのに向いています。
新人研修
新入社員向けの基礎研修では、会社の理念・文化、基本的なビジネスマナー、業界知識などを学びます。新人研修をオンデマンド研修にすることで、内定後〜入社前までに研修を終えることができ、入社後すぐにOJTなど実践的な研修に進められるようになります。
また、新入社員の理解度や進捗に個人差がある場合でも、研修期間を長く設けることで、しっかりと理解を深められるので、全体的な知識の底上げを図れます。一度の集合研修よりも効率よく、知識やマナーが身につくため、オンデマンドでの新人研修を取り入れる企業が増えています。
業務マニュアル研修
業務手順やシステムの操作方法など、実務に直結するマニュアル研修でも、オンデマンド研修は非常に有効です。実際の業務画面を使用したデモンストレーション動画や、マニュアルを映像化した動画があると、文字や説明だけよりも分かりやすくなるためです。
また、受講者は業務で疑問が生じたときに、研修時の映像で再確認できるというメリットもあります。さらに、動画を更新するだけで、最新のマニュアルや業務フローを共有できるため、一度学習プログラムを作成しておくと、研修時だけでなく幅広い用途で活用できます。
資格取得支援研修
オンデマンド研修を導入する企業の中で多く活用されているのが、資格取得支援研修での使い方です。仕事をしながら資格取得に向けた学習をする場合、どうしても学習時間の確保が課題となり、企業によっては業務時間内に学習時間を設けることもあります。
資格取得研修をオンデマンド化すると、受講者は隙間時間に学習できるようになり、業務時間を必要以上に削る必要がなくなります。さらに、模擬試験機能などを導入することで受講者の学習状況を可視化し、対面による研修を実施するなど、効果的な学習支援を提供でき、取得率の向上も狙えます。
オンデマンド研修の導入ステップ
効果的なオンデマンド研修を行うためには、ただ専用ツールを導入するだけでは実現できません。ここでは、質の高いオンデマンド研修の導入や研修のやり方を、4つのステップに分けて解説します。
管理の仕組み・ルールを作る
オンデマンド研修を成功させるためには、管理の仕組みとルールを明確に定めることが重要です。オンデマンド研修は、受講者が自身のペース・スケジュールで行うため、理解度や学習の進捗状況を把握するのが難しいです。そのため、最初に研修の目的や目標を定め、対象者や受講期間、修了基準などを明確に設定します。
また、受講者の進捗管理方法やフォローアップの頻度、効果測定の手法なども事前に決めておきましょう。研修目的や規模に合わせた仕組み・運用ルールを決定し、関係者間で共有することで、導入後に目標などがブレず、受講者にとって有益な研修が可能になります。
教材コンテンツの作成・編集する
研修のルールや仕組みを決定したら、それに合わせて学習コンテンツを作成しましょう。オンデマンド研修の効果は、基本的に学習コンテンツの質に直結します。受講者のレベルや学習目標に合わせて、動画やスライド、テキストなど、さまざまな形式を組み合わせたコンテンツを作ることが大切です。
また、学習コンテンツの作成時は、受講者の分かりやすさだけでなく、集中力が維持できる内容になることも意識しましょう。動画は適切な長さに分割する、随所にクイズやテストを配置するなど、飽きさせない工夫が必要です。もし、自社で学習コンテンツを用意するのが不安な場合は、専門企業へ外注して作ってもらうのもおすすめです。
配信・管理システムの選定する
学習コンテンツの作成後、または作成と並行して、オンデマンド研修用の配信・管理システムを選定しましょう。オンデマンド研修は基本的にLMSを使用しますが、システムによって得意なことやできないことに違いがあります。そのため、オンデマンド研修の目標に適したシステムを選び、導入するようにしましょう。
また、受講者・研修コースの一元管理機能や、研修状況の自動記録機能、動画・資料の配信機能などがあると便利です。しかし、オンデマンド研修の場合はライブ配信に対応していなくても問題ありません。必要以上の機能のあるシステムを導入すると、費用対効果が悪くなるので、元々の機能性よりもカスタマイズ性を重視し、状況に合わせて機能を追加していくのがおすすめです。
効果測定と改善をする
初めてオンデマンド研修を行う場合、会社側が完璧だと思った学習コンテンツを提供しても、受講者にとっては分かりにくい内容になっている場合があります。このギャップを最初から埋めることはできません。そのため、継続的な効果測定と改善を通して、より役に立つ学習コンテンツへアップデートしましょう。
また、実際にオンデマンド研修を活用した受講者から、アンケートなどによる定期的なフィードバックや質疑応答の機会を設けることも大切です。一方的に作り上げるのではなく、さまざまな意見を参考にして質の高い学習コンテンツを作成しましょう。
下記の記事では、実際にオンデマンド研修を導入する際の費用について解説しています。導入費用など、気になるコスト面の疑問を解消できるので、予算に合わせた研修システムの導入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
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まとめ
オンデマンド研修は、働き方の多様化とIT技術の進化により、現代の人材育成において不可欠な学習形態となっています。時間と場所にとらわれない利便性、個人のペースに合わせた学習、コスト削減効果といった、多くのメリットがあります。
一方で、リアルタイムコミュニケーションの制約やモチベーション維持の課題といったデメリットも存在するため、適切な対策と効果測定が重要です。デジタル技術を活用した新しい学習スタイルを効果的に活用し、競争力向上と社員の成長を同時に実現させ、会社のさらなる成長を実現しましょう。
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