総務部 教育DX推進課 首席指導主事 野﨑 崇司 氏
総務部 教育DX推進課 主任指導主事 坂井 啓介 氏
名古屋市教育委員会では以前からアンケートシステムとデータライブラリシステムを活用していたが、不便な点が多く見受けられた。
これらの課題を解消し、より有用性の高いシステムとするために何がポイントとなったのか。
総務部教育DX推進課の野﨑崇司氏と坂井啓介氏にお話を伺った。
名古屋市教育委員会には、かつて名古屋市教育センター管轄の「(旧)あいあいシステム」、学校整備課が管轄する「名古屋市教育情報収集・発信システム(NEDPS)」という2 つのアンケートシステムが存在していた。当時はこの2つを権限や使用目的によって使い分けており、各学校の教員がアンケートを出題する権限をもつのは「(旧)あいあいシステム」だったため、こちらがより日常的に使われていた。
しかし「(旧)あいあいシステム」では、アンケートを出題しようとする教員はその都度申請をして期限付きのアカウントを発行してもらう必要があったこと、また、回答者がアンケートの回答中にセッション切れが発生し、離席等によって途中まで入力した回答が無効になるなど、不便な点が指摘されていた。
一方、「NEDPS」はアンケート機能だけでなくデータライブラリとしての機能も兼ねていたが、こちらも専用アプリケーションのインストールが必要であることや、ログインするためにはUSBキーが必要で、教員は使用するたびに管理職に依頼しなければならないなど、やはり不便な点があった。
こうした状況の中、「NEDPS」の契約が2019年12月に終了すること、開発企業のサポート終了を契機に、新たなシステムの導入が検討されることとなった。
新たなシステムに求められた条件は主に、これまで2つに分かれていたシステムを統合し、アンケートシステムとデータライブラリの両方の役割を担うこと。また、セキュリティ面においては、2017年に文部科学省が発表した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に則ったネットワーク分離に対応することだった。
利便性においては、役職や各学校に紐づいた個別アカウントを発行し常時使用できること、学校間では他校のアンケートを閲覧不可にできることなど、アクセス方法の合理化や権限管理も重要な要件だった。アンケート作成時のデータ添付やテンプレート利用など、これまでアンケートシステムを日常的に活用してきたからこその具体的な要望もポイントとなった。
加えて、システムやユーザーインターフェースを現場の要望に応じてカスタマイズできる柔軟性も求められた。
これらの要件を満たすとして選定されたのが、GLEXAカスタマイズ版として提供されることとなった「あいあいシステム」だ。
新たに導入された「あいあいシステム」は、教育委員会と学校間、各学校の内部それぞれで多方面にわたって活用されている。
アンケート機能においては、「出題者アカウント」と「回答者アカウント」を発行し、使い分けることで、あらゆるアンケートの実施がスムーズになった。各学校の教員は、教育委員会からのアンケートに回答する時は「回答者アカウント」を使い、児童・生徒・保護者等に向けてアンケートを実施する時は「出題者アカウント」を使う形だ。
アンケートの種類は多岐にわたる。例えば、教員研修の振り返りや、学校のセキュリティ点検、保護者への学校評価や行事アンケート、児童・生徒への授業評価アンケート、教職員の意見収集などだ。「このシステムを使ったことのない教員はいません」と野﨑氏。初任者は、初任者研修で早速「あいあいシステム」を活用するという。アンケートに回答する立場、アンケートを実施する立場の両方で、日常使いのツールとして定着している。
データライブラリ機能においては、大容量のデータを迅速かつ安全に共有できる環境が整備されたことで、文部科学省の手引きや研修動画の配信、各種マニュアルや資料のダウンロード提供に活用されている。
新たな「あいあいシステム」導入後の変化について坂井氏に聞いた。「集計が効率化したのはもちろん、回答者の特定、未回答者の把握が簡単にできるようになりました」。この背景にあるのがアカウントの命名規則の工夫だという。アカウントの文字列を学校番号や校種、区番号を組み合わせた形にすることで条件に応じたソートが可能となり、利便性が向上した。実利用者数が事務局約500人、教職員(本務)約11,800人、非常勤約1,700人、幼児・児童・生徒約173,000人(加えてそれぞれの保護者)(2024年5月現在)という規模の名古屋市にとっては重要なポイントだ(※ただし事務局と教職員以外はワンタイムのゲストアカウントを使用)。
アンケート結果が迅速に集計されることで、現場の教員の要望や困りごとを把握し、次年度以降の政策に活かすのはもちろん、年度内で政策の改善を行うサイクルも活発になった。
保護者へのアンケートでは年度初めにURLとパスワードを知らせておき、スマートフォン等で簡単にアクセスできる仕組みを構築。従来の紙でのアンケートと比べ、回収率が向上した。
また、データライブラリ機能ではフォルダのツリー構造についても慎重に検討した。当時の開発担当者と幾度も長時間にわたる打ち合わせを重ね、現在の使いやすさが実現したという。
名古屋市教育委員会では、今後もさらに「あいあいシステム」の利便性向上に取り組んでいく。今年度中には、二次元コードによるアンケートの出題や、教職員ごとの個人アカウントでのシステム利用、アンケート機能を使った回答者からのファイル回収などの機能が追加される予定だ。
「あいあいシステム」はアンケートやデータライブラリとしての単なるツールにとどまらず、名古屋市の教育DXの推進に重要な役割を担っている。
より迅速で活発な情報共有と教員の負担軽減、ひいては教育の質の向上を目指す名古屋市。今後のさらなる発展に期待が寄せられる。
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