1871年に設立された仮病院・仮医学校を創基とする。1939年 に名古屋帝国大学が創立。2020年には、複数大学を運営する日本初の国立大学法人である東海国立大学機構を設置し、岐阜大学との法人統合を行った。「自由闊達な学風の下、研究と教育を通じて新たな価値を創造し人々の幸福に貢献する」というミッションを掲げ、世界屈指の研究大学を目指す。
ノーベル賞受賞者を多数輩出するなど研究拠点大学として知られる名古屋大学は、自己教育力の育成を通じた国際基準のAcademic English教育を推進している。
その一翼を担うオリジナル動画教材の特長と、学生の関心を引き出す取り組みを取材した。
名古屋大学は、2000年以降で6人のノーベル賞受賞者を出すなど国際的な研究拠点大学として知られる。一般学生を対象とした英語教育においても、自己教育力の育成を通して、国際基準のAcademic English(学術英語)の習得を目指している。
自己教育力を培うツールとして、同大学では自主学習eラーニングを重視している。「学術英語の講義動画をアップして学生に学習をしてもらうだけでは、ただ眺めて終わってしまうかもしれません。さらに、学術英語は日常生活ではあまり使わない専門的なフレーズが数多く出てきますので、学生の理解をうながしたり、学習のモチベーションを高めたりする工夫も必要です。このような課題を解消してくれる機能を備えたeラーニングシステムが 『GLEXA』でした」と、同大学のハイブリッド・ラーニングセンターで講師を務める古泉隆先生は話す。
古泉先生が、特に重宝している機能が「GLEXA Motion」だ。「Motion」を使うことで、学術英語の講義動画に小テストを加えたり字幕を付けたりすることが簡単にできる。
「『Motion』は動画の再生中に任意のタイミングで問題や字幕を表示できます。設定した時間帯に動画が自動的に一時停止してそこまでの内容に関する選択問題を出し、正解・不正解をその場でフィードバックします。理解でつまずきそうな箇所にあらかじめ問題が出るように設定しておけば、視聴している学生はその都度自分の理解が正しいか振り返りができますし、正解すれば興味をもって動画の続きを見てくれるでしょう。内容が難しい講義動画には全編に字幕をつけるといった対応も容易なので、講義動画や視聴する学生のレベルに応じた教材作成が可能です」(古泉先生)
ハイブリッド・ラーニングセンターでは、2020年度から『GLEXA』を活用して、動画教材を中心とした2種類のeラーニング教材を運営している。その一つが、名古屋大学の2年生の英語(セミナー)科目の課外学習用教材の「eLEC」で、スマートフォンやPCを使って学習する。
eLECは、「Lecture 1: Japanese Immigration Issues & Policy」「Lecture 2: The Science of Shampoo」「Lecture 3: Peace for Our Time? – The 1937 Nagoya Pan-Pacific Peace Exhibition」の3つの枠組みの講義動画で構成しており、いずれも名古屋大学において実際に開講された英語による講義 「Studium Generale」を収録したものだ。課題数はLecture1で50、Lecture2で59、Lecture3で53の計162ある。約800名の学生は、各Lectureの課題を順番に学習・修了していく。
「『英語(セミナー)』の成績の20%はeLECの課題消化率で評価します。単位取得に直結していますので、大学としては教材の学習進捗状況を把握する必要がありま す。その点、『GLEXA』は管理者権限機能として対象クラスの学生の解答や成績情報などの学習履歴をCSVファ イルで一括ダウンロードすることができるので便利です」(古泉先生)
© 2018 Asraa Ziadi( 名大の授業)
ハイブリッド・ラーニングセンターが『GLEXA』を使って作成している学術英語の動画教材には、単位認定のないオープン講座「Studium Generale Open Course」もある。こちらは2022年度から『GLEXA』での運用を開始。春学期と秋学期に開催し、各学期、名古屋大学・ 岐阜大学の学生および教職員400名程度が受講している。名古屋大学と岐阜大学の先生が対面形式で行った「Five Things to Consider When Talking to People from Other Countries」 「What’s the Smell? The Scent of a Molecule」 「From Astrophysics to Nanoscience and Nanotechnology」などの講義を『GLEXA』で編集したうえで、eラーニング教材として提供している。
「『Studium Generale Open Course』は、春と秋それぞれ15~19程度の講座を用意し、半期の学習期間中に7講義以上完了するとコース修了証を授与する仕組みです。オンデマンド型の自主学習教材なので、スマートフォンやPCで、いつでも、どの講義からでも視聴できます。対面やオンラインで実施した元の講義動画は60分程度ですが、Studium Generale Open Courseでは1本あたり10分程度の短いセクションに分割して公開しています。受講者は、『GLEXA』上で動画の途中で出題さ れる選択問題を解きながら無理なく学習できます。『GLEXA』では字幕のON/OFFを選べるので、学術英語にある程度自信がついたらOFFにして視聴するなど、 学習者が自分のスキルレベルに合わせた使い方ができるのも特長だと思います」(古泉先生)
Studium Generale Open Courseは、高大接続の一環として大学の学びを英語で体験することを目的に、 東海地区の高等学校にも夏休み期間中に提供している。2023年度は高等学校9校、約100名が受講した。受講者からは「文系と理系の両方の講義を受け、自分の考えを広げることができた」「英語で授業を受ける楽しみがわかった」などの感想が寄せられている。
「講義を担当する先生には欧米のネイティブ英語圏出身のほか、日本人も含めてノン・ネイティブ英語圏出身の方も少なくありません。実際の国際会議やビジネスシーンでは、多様な国籍の人とのコミュニケーションが求められます。さまざまな母語の人が話す英語に触れることで、アカデミックな研究やビジネスシーンで使える英語力を磨くことができるのも、このオープン講座のメリットといえるでしょう。『GLEXA』の問題作成や字幕表示などのさまざまな機能を使うことで効果的なコンテンツ作成が可能です。本教材が世界で活躍できる人材育成の一助になればと思っています」(古泉先生)
『GLEXA』を動画学習のプラットフォームと位置づけ、 オリジナルコンテンツで高度人材の育成に取り組む名古屋大学の挑戦に注目していきたい。
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